ぐらんざ人 俳優 高橋一生

実話を元にした愛あるミステリー

「夫は誰だった?」
 この衝撃的な見出しの新聞記事に端を発し、構想20年。満を持して映画化されたのが、本作『嘘を愛する女』。長澤まさみさん扮する第一線で活躍するキャリアウーマン・川原由加利と同棲する研究医の恋人・小出桔平を演じるのが、今月の表紙の人・高橋一生さんだ。共に食べ、眠り、何気ない会話を交わす二人の穏やかな日々はずっと続くかに思えた。ある日突然、桔平がくも膜下出血で倒れるまでは・・・。彼の名前、職業、免許証、戸籍など、すべてが“嘘”だと知った由加利は、真実を探す旅に出るのだが・・・。

 感情を爆発させ、アグレッシブに行動する由加利の“動”に対して、高橋さん演じる桔平は、“静”のイメージ。眠っているシーンや回想シーンが多くセリフも少ない。にもかかわらず、本作の“嘘”というキーワードを担う重要な役どころだ。

 「桔平は多くを語らないため、観る方に想像させる余白を持つ人物。あまり演じたことのない役柄だけに、ぜひ挑戦したいと思いました。謎に包まれている設定なので、どこまで見せていいのか、ベールをかけておくべきなのか、常にそのさじ加減を計っていました。演じていて、終始、桔平とシンクロしていた感覚だったので、愛する人に嘘をつき続ける苦しさをずっと感じていました」と高橋さんは役柄を演じた心情を語ってくれた。その甲斐あって、ミステリアスで、どこか影のある独特の空気感をまとった桔平像が出来上がっている。

愛する人の“嘘”について。

 「僕自身は、知らなくていいことは知りたくないです。知ってしまうことで、真実が変わってしまうこともあるから。僕は愛する人の過去を知りたくないし、きっと知らない方がいいこともあると思います。生きていく上では、ある意味、自分のいいように解釈していくことも必要なんじゃないかと思うんです」と高橋さんは静かに語る。

 ラブストーリーであり、ミステリー、さらにロードムービーの要素を合わせ持つ、ひとつの枠にハマらない脚本のおもしろさ、小道具や役者の体の位置、手の角度に至るまでの監督のこだわりなどが幾層にも積み重なり、登場人物の複雑な心情が浮き彫りにされていく。

果たして桔平の真実とは?
ふたりが過ごしてきた時間は本物だったのか?

観終わった後、お互いの関係の中で本当に大切なものは何かということを考えさせられる作品である。これを機に、パートナーとの関係をちょっとだけ見直してみるのも悪くないのでは。


西岡裕子=文
映画『嘘を愛する女』
監督:中江和仁
脚本:中江和仁 近藤希実
出演:長澤まさみ、高橋一生、DAIGO、川栄李奈、黒木瞳、吉田鋼太郎ほか
◎1月20日(土)より
 TOHOシネマズ天神・ソラリア館、ユナイテッドシネマキャナルシティ13、
 Tジョイ博多、シネプレックス小倉 ほかにて公開

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