Essay3 水辺の少年に帰ろう – 殿様トンボ、ウチワヤンマ。

 水辺にトンボが飛び交うと、気分は夏の少年に戻ってしまう。四年前に佐賀に来て、ある人から佐賀にはウチワヤンマが飛んでいると教えてもらい、さっそく図鑑で調べたらまだ見たことのないトンボだった。それ以来、水辺を歩くたびに初めての出会いをわくわくしながら期待していたがなかなか実現しなかった。
 
 ある初夏の休日、佐賀城公園南堀端で急成長を続ける蓮の若葉に止まっているトンボをチェックしながら歩いた。見つけるのはシオカラトンボの仲間かコシアキトンボばかりで、憧れのウチワヤンマの君には出会えない。出現にはまだ早いのかとあきらめ顔で何気なく空を仰いだ。すると頭上の梢の先にトンボが一匹、ぽつんと止まっていた。かなり大きくてなんとなくウチワヤンマらしい姿である。持参していたカメラで、角度を変えて何度もシャッターを押して持ち帰り、パソコンに保存して確認してみた。

 ウチワヤンマの特徴である尻尾のウチワ形状がはっきりと映っている。胸の模様も黄と黒が鮮明に現れていた。トンボ類は高い梢やその葉陰で休むのもいる。佐賀城公園に多いコシアキトンボも、時季によっては園内の梢に止まっているたくさんの姿を見かける。チョウトンボも水面を飛び交うとき以外は、高い梢や葉の上で休んでいるのを見かけて撮影したことがある。

尻尾のウチワにある黄色の三日月状の斑紋が特徴です。
ヤゴから脱皮するウチワヤンマ。かなり大きなヤゴでした。

 
 最初の撮影で、ウチワヤンマは地表と水平に止まることがわかった。これはサナエトンボの仲間に特有な休み方である。オニヤンマは枝先や葉先などにつかまってぶら下がり状態で休むので、オニヤンマの仲間ではないことがわかる。素人でもわかるもう一つの特徴は、目(複眼)が離れていること。オニヤンマの仲間は複眼がくっついている。そっくりの仲間にタイワンウチワヤンマがいるがウチワがやや小さく、ウチワの中に三日月状の黄色い斑紋がないことで区別できるらしい。初めて出会ってからしばらくして梅雨が明けたころに行ってみた。すると水面を遊弋するもの、蓮の葉に休むものなどたくさんの姿を見かけた。盛夏の池の制空権を握っているようだった。

 トンボ少年として次に気になったのは幼虫ヤゴの姿である。なんとか見たいものだと気にかけていたら、岸辺で脱皮するシーンに出会えた。想像よりも大きい。念ずれば通ず、最近になって鬼菱の葉に産卵するシーンも動画で撮影できた。佐賀市内でウチワヤンマを見かけるのは、佐賀城公園のお堀以外では、各地の公園の池やクリークなど。佐賀城公園では、トンボの殿様みたいに君臨しているようにも見える。

[文・写真]
川古川水童 (かわごがわすいどう)

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