Essay6 水辺の少年に帰ろう – 散りもみじ、オシドリに化け。

ふる里の山々のみごとな紅葉が終わるころ。

その美しい彩りの木の葉を身にまとったようなオシドリたちが山合のため池にもやって来る。ひと冬をこの池で過ごすためである。
美しい羽で飾るのは雄だけ。雌は年中を地味な羽色で過ごすようだ。雄が美しく目立つのは繁殖期のこの時期だけで、繁殖期が過ぎ去ると雌と区別がつきにくい地味な羽色に戻ると聞いた。羽替わりの時期の雄を一度だけ見たことがある。妙なオシドリの雌がいると思って見たのだが、その時が羽替わりのころだったのであろう。

迎え入れる雌に近づく雄

ふる里の池へは帰省するたびに観察に出かける。十一月下旬以降タイミングが良いと私に気づかずにのびのびとくつろぐ群れを観察できる。撮影したこの日は岸に近いところで群れており、しかもしばらくは私に気づかぬままであった。カメラを向け次々とシャッターを押した。そのうちに私の存在がわかったのか、群れは奥の入江へと移動し見えなくなってしまった。

家へ戻り写真データをパソコンに移して、出来映えをチェックしていて気づいたのだが、一羽の雄が雌に近づいていく一連の行動をとらえていた。どうやらオシドリの交尾シーンを撮影していたのである。一羽の雌が水面で身を低くしているところへ雄が近づいていく。その後の行動までを写真がとらえていた。雄を受け入れた雌はほとんど水面下に沈んでいる。短い時間のことであったと思うが偶然とらえていたようだ。水鳥だから水の上が安心と心得ているのだろうか。

子どものころにオシドリを見かけることはなかったように記憶している。野遊びが好きな子どもだったから、幼友達たちと雨の日以外は遊びまわり近くのため池の様子は熟知していたつもりである。冬になるとマガモがやって来るのは知っていたし、飛ぶのが苦手な留鳥のカイツブリを追い回して遊んだこともある。オシドリはもっと山奥に住む珍しい鳥だと思っていた。それを見かけるようになったのはこの十年ぐらいの間である。町内の数か所のため池に毎年飛来するのを確認している。

雄を迎え入れた雌は、しだいに水中に没した

残念なことに、ここ数年この池が狩猟対象区に入ったためにカモ猟のハンターがやって来て散弾銃を放つ。そうすると姿を見せなくなる。猟の狙いはオシドリではないのだが近づかなくなる。別の池へ避難するようだ。鳥たちもわかっていて狩猟期間が終了すると、再びどこからか姿を現し山桜が咲くころまでこの池で過ごして去っていく。

[文・写真]
川古川水童 (かわごがわすいどう)
*写真は全て武雄市若木町で2015年12月同日撮影。

関連記事

  1. 筑後川 諸富のエツ

  2. Essay2 水辺の少年に帰ろう – ミサゴ、襲来。

  3. ホタルの町復活。

  4. Essay1 水辺の少年に帰ろう – カワセミの街、佐賀。

  5. お届けします。素敵な古くて新しい。

  6. Essay5 水辺の少年に帰ろう – 青い鳥を探して。