Essay8 水辺の少年に帰ろう – 真夏の不思議なトンボ。

■葦の葉先で、陽ざしを受けて翅がきらめくチョウトンボ。2018年6月武雄市若木町で撮影。その他は2017年8月佐賀城公園内で撮影。

もう十年近く前の福岡は大濠公園内の小さな池でのことです。夏の太陽が頭上から容赦なく陽ざしを注ぐ昼前のころ、池の上をひらひらと飛ぶ虫がいる。蝶のような飛び方で、ゆっくり飛んでいるかと思えば急上昇で高く舞い、水面すれすれを這うように飛んでいるかと思えば、縄張りを荒らす奴が近づくと急転回して瞬間移動のように場所を変え、追い払う。そしてなかなか草の上などには止まらない。撮影者泣かせのこの昆虫に初めて出会ったときには、すぐには正体がわからなかった。ようやく撮影した姿を昆虫図鑑に照らして、チョウトンボという名であると知った。名前からしてこれは珍種に違いないと少々興奮したのだが、絶滅危惧種でもなく個体数も割と多いトンボだと紹介してある。飛び方がチョウのようにも見えることからこの名がついたようだが、れっきとしたトンボの仲間である。たまたま私がその存在を知らなかっただけらしい。すっかりファンになって佐賀に来てからも探し回ったが、簡単には見つけられなかった。個体数は多いがどこにでもいるトンボではないらしい。結論から言えば、葦や睡蓮など水草の多い古い池でよく出会えることが分かった。水草の先に止まってくれた時が撮影のチャンス。太陽の強い陽ざしを反射して、翅はメタリックブルーにきらめく。光の角度で変化するその濃淡がとても美しくて、様々な角度から撮影しようと夢中でシャッターを切った。わずかな風にもそよぐような草の葉に止まっているのでいい翅の色合いになかなかピントが合わなかったりする。熱射に頭がもうろうとするほどまで粘っていると、急に飛び立ったりするのでがっかりしてしまう。このチョウトンボはどこからともなく池の上に飛来し、一日中飛び回っているわけでもないようだ。ほとんど見かけない時間帯もあるので、そういう時はどこにいるのだろうと気になった。そう思って観察していたら、高く舞い上がって近くの樹木の中へ移動していく数匹を見つけた。葉陰に隠れて見えなくなったが、高い梢で休むように見えた。佐賀市内のひょうたん島公園では池の周囲の木立の梢に止まって憩ったり、ちょっと飛び回ったりしてはまた止まる行動を繰り返している集団を見かけた。繁殖行動をするときだけ水面近くに降りてきて縄張りを飛び回っているのだろうか。遊弋を繰り返すギンヤンマや葦の葉に止まってほとんど動かない緋色のショウジョウトンボなど、夏の古池には少年の心を取り戻させるトンボが多い。

桜の高い梢で一休み中。
鬼菱が繁り始めた水面でホバリング中。
ガマの葉の上で風に吹かれてバランスをとる。

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