ぐらんざ人 落語家 笑福亭鶴瓶威

台本を読んで思わず涙。心を揺さぶる映画

強く、優しい人になりたい。
11月に公開される映画『閉鎖病棟』は、そう思わせてくれる作品だ。主演をつとめたのは、笑福亭鶴瓶さん。妻と母親を殺めた罪で死刑を執行されながらも失敗し、生きながらえた梶木秀丸を演じている。刑の再執行も、釈放も叶わない秀丸は、とある精神科病棟に隔離されている。そこでの彼は、殺人犯には思えない懐深く温厚な人物。幻聴に苦しむ元サラリーマンのチュウさん、義理の父親によるDVで傷ついた女子高生・由紀と家族のように暮らしている。そんなある日、秀丸が再び人を殺めてしまう事件が起きてー。
「初めはこういう映画って知らなかったんですよ」と鶴瓶さん。
「監督から出演のオファーの長い手紙をいただきましてね。そこまでいわれてんのやったら、って話を受けたんですよ。それで台本を読んでたら、由紀やチュウさんとのシーンで涙出てきてね。いつもはあんまり泣かないんですけど。撮影では泣いたらあかんのですよ。でも、泣きそうになって。泣くことがいいことではないんですけど、自然と詰まってくるというか」

「えげつないこともあるけど優しい映画」

映画のテーマは重く、ショッキングなシーンも描かれている。観ていると怒り、悲しさ、やるせなさという感情が押し寄せてくる。その一方で、温かな気持ちにもさせてくれる不思議な映画だ。劇中、チュウさんが「ここを出た後、みんなで暮らせたらいいな」とつぶやくシーンがある。
「結局色んな事情がある人間たちですから、一緒に暮らせないことなんてわかっているんですよ。でも、仲のええもん同士が暮らせたら、敵が来ても自分らで守れるっていうか。あり得ないことだけど、そんな暮らしが出来たら幸せなんじゃないかって」
ささやかな夢を語り合う、彼らの暮らしぶりは穏やかで優しい。だが、病院の外の人たち、いわゆる”普通”とされている人たちから突きつけられる現実、そして彼らを深く傷つける事件が起きる。
「普通って何やろなって思いますね。患者たちは、言い方は悪いけど、世間的には普通じゃないわけでしょ。だけど、ものの考え方なんやろうな、僕にとっては普通なんですよね。優しい。相手のことを思って行動する人たちが集まっているというか、自己犠牲ですね。えげつないこともいっぱいあるんですけど、優しい映画ですよ」
秀丸はなぜ再び、手を血に染めたのか。傷を負った彼らは再び立ち上がることができるのか。映画館で彼らの行方を見届けてほしい。

山崎智子=文


映画『閉鎖病棟 -それぞれの朝-』
監督・脚本:平山秀幸
出演:笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈ほか
配給:東映
◎11月1日(金)よりT・ジョイ博多、ユナイテッドシネマ福岡ももち、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、T・ジョイリバーウォーク北九州、T・ジョイ久留米 ほかにて公開


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