楽しみながら無理なく続けることが大切 自分たちの町は自分たちでつくる。

音楽イベント、映画制作…
住民主導のまちづくりが活気を生み出す

旧長崎街道の重要な宿場町として栄えた牛津宿。佐賀の老舗百貨店佐賀玉屋発祥の地としても知られ、明治期に建てられた赤れんが倉庫は町のシンボルです。この倉庫を活かして何か楽しいことを…というきっかけで集まった「牛津赤れんが会」の仲間たちが活動を続けて20数年。会を率いる「生まれも育ちも牛津んもん」の田中正照さんが町づくりへの想いを話してくれました。

60歳になったときの自分は?
友人づくりで始めた「牛津赤れんが会」

牛津生まれの牛津育ち、現在もお孫さんと一緒に牛津で暮らす生粋の「牛津んもん」の田中さんは、佐賀市内の高校を卒業後、昭和47年、放送を開始して3年ばかりのサガテレビに入社してからは、仕事ひとすじのいわゆる会社人間だったそう。「消防団にも青年団にも入っていませんでしたから、生活の中心は会社だけ。友達づきあいも同窓生くらい。一方で、よそから牛津に嫁いできた妻は、息子のPTAや町内会の活動を通じてネットワークを広げて自分よりも根を張っているわけですよ。このまま年をとって、60歳くらいになった時、自分はどうなるのだろう、と傍と思うようになりました」。

かつて牛津にわかの公演が行われていた牛津座のにぎわいの様子

そんな時、たまたま目にした町報で、町に残る赤レンガの倉庫を拠点に町づくりをするためのメンバー募集の告知を見て、「仕事関係以外の人間関係・ネットワークづくり」になればと、40代になった頃に牛津赤レンガ会に参画。「年とってから、友達がいないのはイヤだなと思って。当時、自分たちのよかごとせんね、と言ってくれる面白い役場の担当者さんがいたので、やってみようかなと思いました。人に言われるのはあんまい好かんけん(笑)」と田中さん。とはいえ、40代は世で言う働き盛り。それでも休暇や有給休暇、勤務後の時間をやりくりしながら仕事と町づくりの活動を両立してきました。

小城映画「天山(やま)の如く この男、正直なり」

赤れんが会のメンバーは総勢17、18名。20年以上もの間、メンバーはほとんど変わらないまま共に年を重ねてきました。「基本的には、補助金はもらいません。補助金を頼りにしたら、制約があったり、補助金が切れたら活動も終わり、になるでしょう? やるからには自分たちが楽しくなくちゃ。自分たちのためにやる、無理はしない、そして長く続けることを念頭に置いています」。
続けるためには、好きなこと、やりたいことをやろうと、ジャズ部門、映画部門を設けて、その分野に興味のある人が集まるようになったそう。継続することの相乗効果はじわじわと現れ、2017年には牛津歴史映画を完成させ、昨年は2作目が完成し、県内各所で上映会が行われています。「2作目の「天山の如く この男、正直なり」は、書聖中林梧竹と江藤新平を主人公にしたオリジナル映画で、協賛金集め、脚本づくり、撮影など、多くのボランティアの方々に支えていただきました」と田中さん。小城発信の映画が、人の輪を広げ、小城の魅力発掘にも寄与しているのです。

映画「天山(やま)の如く」の撮影風景

ジャズ部門では、月に1回ジャズライブを開催し赤れんが館の恒例イベントとして定着、途絶えていた「牛津にわか」の復活にも赤れんが会が裏方として参加し、8年もの間継続できています。続けることが町を活気づけるために大切であることを物語っています。

ジャズライブや寄席など、様々なイベントが開催される赤れんが館館内。佐賀玉屋発祥の地でもある牛津に残る赤れんが館に、佐賀玉屋200周年記念にグランドピアノが寄贈された。現在では、月1回ジャズライブが開催されている。

昨年12月、佐賀市のピアニストを介して鹿島で眠っていたピアノが寄贈された。

月に1回行われているジャズセッションライブのひとコマ。田中さんは中学の頃から音楽が趣味で、ベーシストの一面をもつ。

街並みや駅、学校、コミュニティスペース…
あるものを活かして再生に臨む

ふるさとを思い、自発的に行動をおこし、継続してきた町づくりの活動が認められ、2019年2月、牛津赤れんが会が第9回地域再生大賞で優秀賞を受賞したことも励みになっています。「偉かごと書かんでね」と繰り返す田中さんの町づくりへの想いはいたってシンプル。「町から小城市になって、横の連携もできてきたけど、自分の基本は牛津です。それぞれの校区にコミュニティと文化があり、それを認め合って共生していくのがこれからの町づくりだと思っています。地域の衰退は決して行政だけのせいではありません。目を向けてもらえるようなことをしていくのが自分たちの使命だと思っています。今ここにある街並みや高校、地域のコミュニティスペース、本線が走る駅などを活かしながら、みんなと一緒に町を盛り上げていきたいです」。

田中 正照(たなか まさてる)
Profile
牛津赤れんが会会長。1954年牛津町生まれ牛津在住。佐賀唯一の民放テレビ局に勤務しながら牛津赤れんが会の立ち上げ時から携わり、住民主導型の町づくり活動を行ってきた。ジャズライブや小城映画の制作などメンバー一丸となって町の再生に取り組んでいる。


■映画「天山(やま)の如く この男、正直なり」上映会
2月7日(金)17時30分 佐賀県庁上映会
2月9日(日)14時 佐賀市新馬場会所上映会
3月29日(日)9時 撮影場所巡りバスツアー
4月19日(日)枝元一代ライブと上映会 ゆめぷらっと小城

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